メインストーリー
第1幕 The Show Must Go On
第3話 カレー伝説・序章
登場人物
監督(いづみ)
伊助(支配人)
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MANKAIカンパニー団員寮 談話室
支配人 | さあ、召し上がれ! |
いづみ | こ、これは……。 |
綴 | 別の意味での飯テロっすね……。 |
咲也 | きょ、今日はまだいい方だど思いますよ。 |
いづみ | ってことは、いつもはもっとひどいってこと!? |
真澄 | 食欲が失せた。 |
支配人 | 遠慮しないでください。おかわりもありますから! |
綴 | じゃあ、とりあえず、一口……。 |
いづみ |
そ、そうだね。食べてみたら意外とおいしいかもしれないし。 いただきます。 |
咲也 | あ、気をつけてくださいね! |
綴 | ぐっーーギブっす。 |
いづみ | ーーっ。 |
真澄 | ごちそうさま。 |
支配人 | 碓氷くん。一口も食べてないじゃないですか! |
いづみ |
(だ、ダメだ。生活の基盤はまず食事からっていうし、 この食事じゃ根底から団員がダメになってしまう) |
いづみ | (この材料がなんとかできる方法は……) |
いづみ | ーーカレーにします! |
支配人 | え? |
いづみ |
カレーなら、このどうしようもない味付けも 一種のスパイスとして活用できます! |
綴 | 本当っすか? |
支配人 | カレーの方がいいですか? それじゃあ、作り直してーー。 |
いづみ | 私がやります! |
真澄 | アンタ、料理できるの? |
いづみ | 人並みにはね。 |
いづみ | 今後も食事当番は私がやります。 |
支配人 |
そんな、監督に食事当番まで任せるわけにはいきませんよ。 心配しなくても、私がきちんとーー。 |
綴 | じゃあ、俺もたまに交代します。 |
咲也 | 綴くん、料理できるんですか? すごいですね。 |
綴 |
うちの親、仕事で忙しくて、俺が弟の食事作ることもあったから。 チャーハンくらいなら作れる。 |
綴 |
でも、作り直しにしても、 この物体はどうにもならないんじゃないっすかね。 |
いづみ |
それでもカレーなら……カレーなら、きっとやってくれるはず。 ちょっと待ってて。 |
いづみ | お待たせ。できたよ。 |
綴 | 大丈夫っすか? |
いづみ | 味はばっちり。 |
真澄 | アンタの料理ならなんでも食べる。 |
咲也 | おいしそうな匂いですね。 |
支配人 | どこのカレールー使ったんですか? |
いづみ |
……ルー? それってまさか、 あらかじめ調味料も決められた市販のルーのことですか? |
支配人 | え? そうですけど……。 |
いづみ |
そんなもの使うわけないじゃないですか。邪道。怠慢。 カレーに対する冒とくです。 |
支配人 | ええ? じゃあ、どうやって作ったんですか? |
いづみ | よくぞ聞いてくれました。まずスパイスにはこだわりの……。 |
真澄 | ごちそうさま。 |
綴 | うまかったっす。 |
支配人 | あ、あれ!? 二人とももう食べちゃったんですか!? |
咲也 | いつの間に!? |
綴 | スパイス講義が長すぎ。味はおいしかったけど。 |
支配人 | じゃあ、私もいただきます! |
咲也 | いただきます! |
支配人 | こ、これは……! |
咲也 |
おいしいです! オレ、こんなにおいしいカレー、 生まれて初めて食べました! |
支配人 | 私もです。 |
いづみ |
当然です。この配合にたどりつくまで、 どれほどの時間と労力を費やしたか……そもそも……。 |
支配人 | おかわりしよう……。 |
綴 | 支配人、らっきょうないっすか。 |
咲也 | オレもおかわりします! |
いづみ | 人の話を聞きなさい! |
支配人 | ごちそうさまでした。 |
咲也 | ごちそうさまでした。おいしかったです! |
綴 | ごちっした。 |
真澄 | 毎日食べたい。 |
いづみ | そう? バリエーション的には365日カレーいけるけど。 |
綴 | そ、それはちょっと……。 |
咲也 | それにしても、こうしてみんなでごはん食べるのっていいですね。 |
いづみ | そうだね。にぎやかで楽しい。 |
支配人 | 昔の団員寮を思い出します。 |
支配人 |
あ、そういえば初代春組の公演ビデオがあるんですけど、 みんなで観ませんか? |
いづみ | いいですね。それじゃあ、コーヒーでも淹れます。 |
咲也 | じゃあオレ、手伝います! |
真澄 | じゃあ俺、コーヒー淹れるアンタを見てる。 |
綴 | 見てるだけかよ! |
いづみ | (これが初代春組……) |
咲也 | すごいですね……。 |
いづみ | うん。客席中、スタンディングオベーションだよ。 |
咲也 |
MANKAIカンパニーって こんなにすごい劇団だったんですね。 |
支配人 |
春組は明るくて正統派なプログラムが多かったので、 四組の中でも一番人気でした。 |
綴 | ロミジュリって使い古されたモチーフだけど、新鮮っすね。 |
支配人 |
最初はモチーフとして使うにしても、悲劇だし、春組のイメージと ずれるから別の組でやろうって言ってたんですけど……。 |
支配人 |
……劇団の脚本家がどうしてもって譲らなくて。 春組らしくアレンジを加えて、結果大成功でした。 |
綴 | そうなんすか……。 |
咲也 | オレたちもいつか、こんな風になれますかね。 |
綴 | ハードル高そうだけど。 |
いづみ | なろう。絶対に。 |
いづみ | (こんなすごい舞台を作った劇団を潰したりなんかしない) |
いづみ |
(お父さんが作り上げたこの舞台に恥じないものを、 私も作らなくちゃ……!) |
支配人 | なりましょう! |
咲也 | はい! |
綴 | ま、やるしかないんすよね。 |
いづみ | 明日からいよいよ稽古開始だよ。7時に稽古場集合だからね。 |
綴 | マジっすか。昔やってたパン屋のバイト並……。 |
咲也 | わかりました! |
真澄 | アンタが起こして。 |
いづみ | 甘えない! 今日は早く寝て、明日に備えよう! |