メインストーリー
第1幕 The Show Must Go On
第9話 ロミオとジュリアス
登場人物
監督(いづみ)
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MANKAI寮 談話室(昼)
いづみ | ええと、タイトルが、『ロミオと』……『ジュリアス』? |
咲也 | ジュリエットが男になってるみたいですね。 |
真澄 | おかま? |
シトロン | オー斬新ネ。 |
いづみ | 男同士の友情ものみたい。 |
いづみ | ……。 |
いづみ | (……これ、面白い) |
咲也 | この脚本、すごく面白いと思います! |
いづみ |
うん。単純にジュリエットを男に変えただけじゃなくて、 友情ものとして成り立ってる。 |
シトロン | イイネ。 |
真澄 | 普通。 |
いづみ | それじゃあ、さっそくこの脚本で配役をーー。 |
綴 | ーー監督、脚本! |
いづみ | 綴くん? もう起きたの? |
綴 | きゃ、脚本、どうっすか……? |
いづみ | バッチリ。来月の公演はこれでいこう。 |
綴 | 本当っすか! |
いづみ | うん。 |
綴 | っしゃー! よかったああ……。 |
いづみ |
お疲れさま。女装問題をどうするのかと思ってたけど、 こんなふうに解決するとは思わなかったよ。 |
咲也 | ジュリエットを男にするなんて、よく思いつきましたね。 |
綴 |
ロミオとジュリエットじゃないけど、俺も家庭環境が原因で 友達と引き離されたことがあってさ……それをヒントにした。 |
いづみ | 実体験なんだ? |
綴 |
そのまんまじゃないっすけど、俺の家貧乏だったんで、資産家の息子だった 友達は俺とアスぶなって親に言われたらしくて……。 |
綴 | すごく気の合う友達だったんすけど、疎遠になっちゃいました。 |
シトロン | 気持ちわかるヨ。大人のジョージつらいネー。 |
綴 | 大人の事情な。一気にいかがわしい。 |
咲也 |
脚本では最後、引き離される悲劇じゃなくて、 一緒に旅立つハッピーエンドになってますね。 |
綴 |
先代春組は王道で明るいイメージだったって聞いたから、 イメージはそのまんまの方がいいかなと。 |
いづみ |
そうだね。 新生春組の旗揚げ公演の脚本として、すごく良いと思う。 |
いづみ | じゃあ、さっそく配役を決めていこうか。 |
綴 | あ、一応当て書きにしたんす。 |
いづみ | そうなの? |
綴 | 主役のロミオは咲也のつもりで。 |
咲也 | え!? オレですか!? |
綴 |
やっぱ、この中で一番最初の団員だし、 春組っぽい感じがするから。 |
いづみ | 明るく元気でまっすぐ、王道ってイメージだもんね。 |
綴 | っすね。 |
咲也 |
そんな、オレはブダイの上にさえ立てれば、 脇役でもなんでも、背景でもいいんです。 |
いづみ | 背景って、そんな役ないから。 |
咲也 | だって、本当に、オレでいいんですか……? |
シトロン | ノープロテインダヨ。 |
綴 | プロブレムだろ。日本語以外も弱いのかよ。 |
真澄 | どうでもいい。 |
いづみ | じゃあ、座長は咲也くんに決まり! |
咲也 | がんばります! |
いづみ |
ちなみに座長には、リーダーとして春組を まとめてもらいたいと思ってます。お願いしてもいい? |
咲也 | リーダー……? オレにできるでしょうか。 |
いづみ |
大丈夫だよ。咲也くんなら、きっと。 |
咲也 | ……がんばります! |
いづみ | よし、その意気! |
いづみ | 他の配役はどうなってるの? |
綴 | ジュリアスが真澄。 |
真澄 | ふーん。 |
綴 |
ロミオの友達、マキューシオが俺。 ジュリアスの兄貴分、ディボルトが至さん。 |
いづみ | 年齢的にも丁度いいね。 |
綴 | で、ロレンス神父がシトロンさん。 |
シトロン | オーウ、神父はセリフ少ないヨー。 |
綴 | わざとっす。 |
シトロン | これが才能あふれるワタシに対する新人いびりネー。 |
綴 | アンタ、日本語あんまり話せないでしょ! |
いづみ |
そっか。神父役は台詞は少ないけど、短い時間でインパクトを 残さなくちゃいけないし、シトロンくんにピッタリだ! |
綴 | っす。 |
いづみ |
当て書きなだけあって、イメージもバッチリ。想像以上だよ、 綴くん! あとは練習をこなして、最高の状態で演じるだけだね! |
咲也 | はい! |
綴 | その練習が大変そうっすけどね。 |
シトロン | 楽しみダヨー。 |
真澄 | なんか、アンタ、テンション高い。 |
いづみ |
そりゃあそうだよ。こんなにいい脚本ができたんだもん。 稽古が楽しみ。 |
真澄 | ふーん。俺だって、脚本くらい……。 |
いづみ | 真澄くんは役者としてがんばってくれればいいから! |
いづみ |
さ、いよいよ明日から読み合わせを始めるから、 皆、ちゃんと読み込んできてね! |
MANKAI寮 中庭(夜)
いづみ |
(脚本が完成したおかげで、今日の稽古は皆、 一段とやる気が出てたな) |
いづみ |
(さてと、至さんにも脚本を渡して、 配役の決定のことも知らせて来よう) |
いづみ | (体調はもう大丈夫かな……) |
いづみ | 至さん、いますか? 立花ですけど。 |
いづみ | ……? |
いづみ |
(寝てるのかな? でも、なんか中から 小さくカタカタって音が聞こえる……) |
いづみ | 至さん、入りますよ? |
103号室(夜)
至 | ーー入るな! |
いづみ | !! |
いづみ | い、至さん? |
至 |
あーマジふざけんなよ。今ので3キルは逃した。 くそ、殺すぞ雑魚。 |
いづみ | いいいい至さん? |
至 | 勝手に入ってんじゃねえよ。今取り込み中なの、見てわかんない? |
いづみ | (か、顔が近い……この状況って、いわゆる壁ドン……!?) |
いづみ |
取り込み中っていうか、ゲーム中……というか、 どちらさまですか……。 |
至 | 茅ヶ崎至ですけど何か。 |
いづみ | えええええ……。 |
いづみ | (あの大人な至さんがこんなことに……) |
いづみ | さ、さては、よっぽど具合が悪いんですね……!? |
いづみ |
あの、これ、脚本、読んどいてください! 配役も書いてありますから! お大事に! お邪魔しました! |
MANKAI寮 中庭(夜)
いづみ | び、びっくりした……。 |
いづみ | (明日には治ってるといいな……治ってるよね?) |