メインストーリー
第1幕 The Show Must Go On
第10話 エアーが薄い2人
登場人物
監督(いづみ)
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稽古場
いづみ |
それでは今日からいよいよ読み合わせを始めます。 みんな、脚本は読んできたよね? |
咲也 | はい! よろしくお願いします! |
シトロン | 台詞5つしかなかったヨー。 |
綴 | 自分で書いた分、頭には入ってるんで大丈夫っす。 |
いづみ | 至さん、ちゃんと台本読まれました? |
至 |
うん、届けてくれてありがとう。 寝ぼけてたんだけど、変なことしなかったかな? |
いづみ | い、いえ、大丈夫です。 |
いづみ |
(今日はいつも通りだ……治ってよかったけど、 昨日の至さんはなんだったんだろう) |
咲也 | あれ? 真澄くん、台本は? |
真澄 | もう全部入ってるから必要ない。 |
いづみ | え!? 台詞全部覚えたの!? |
真澄 | そう。 |
咲也 | すごいね、真澄くん。俺と同じくらい台詞があるのに……。 |
いづみ |
(記憶力まであるなんて、本当に才能の塊だな。 すごい逸材を引き当てちゃったのかも……) |
いづみ | それじゃあ、さっそく冒頭から。 |
咲也 |
『一緒に旅を出よう、ジュリアス。えっとーー こんな窮屈な町は飛び出してーー世界中をー、巡るんだ!』 |
真澄 |
『ロミオ、お前には力がある。俺には頭脳が。 二人ならきっと何でも上手くやれる』 |
綴 |
『ロミオ、失恋したんだって? 気にするな。 女なんて世界にごまんといるさ。』 |
咲也 |
『家も名もーーええと、捨ててくれ、ジュリアス。 僕たちにはーー。』 |
真澄 | やりづらい。 |
咲也 | え? |
真澄 |
いちいち突っかかるから、やりづらい。 |
咲也 | あ、ごめん。 |
綴 | 最初なんだから、そんなこと言ってもしょうがないだろ。 |
いづみ | まずは通ることが大事だから。 |
真澄 | 棒読みすらできてないじゃん。 |
咲也 | ごめん……。 |
真澄 | アンタも、自分で書いたくせに入ってないし。 |
綴 | は? |
真澄 | 普通、作者はキャラとか掴んでて当然なんじゃないの。 |
綴 | 誰が掴んでないんだよ。 |
真澄 | 何も考えないで台詞言ってるって感じ。 |
綴 |
それは、表現できてないだけで、 別にわかってないわけじゃねえし。 |
真澄 | あっそ。結果は同じだけど。 |
綴 | ああ? |
いづみ | 真澄くん、言い過ぎ。 |
真澄 | 本当のことだし。 |
咲也 | ……すみません、オレが下手くそだから。 |
綴 | 真澄、和を乱すなよ。 |
真澄 | アンタらと同じように下手になれってこと? |
綴 | そういうことじゃねえだろ。 |
シトロン | 頭に血がついてるヨ、二人とも。 |
いづみ |
それをいうなら血が上ってる。 でも、シトロンくんの言う通りだよ。二人とも落ち着いて。 |
綴 | 俺は落ち着いてるつもりっす。 |
真澄 | ……。 |
いづみ | (この雰囲気のまま続けてもしょうがないな) |
いづみ | ちょっと休憩にしよう。 |
咲也 | はい。すみません……。 |
綴 | はー。 |
真澄 | 疲れた。 |
シトロン | なんだかエアーが薄いネー。 |
いづみ | それを言うなら悪い、だよ。 |
至 |
ごめん、まだ本調子じゃないから、 俺はこれで早退させてもらってもいいかな。 |
いづみ | え? |
至 | ごめんね。 |
いづみ | いえ、お大事に……。 |
いづみ |
(まさか、またあの状態になるんじゃ…… 明らかにゲームしてたし、体調悪いって本当なのかな……) |