メインストーリー
第1幕 The Show Must Go On
第29話 恋について・春
登場人物
監督(いづみ)
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MANKAI寮 談話室
真澄 | ……。 |
いづみ | ただいま。 |
咲也 | あ、おかえりなさい! |
シトロン | おかえりダヨ。 |
至 | おかえり。 |
綴 | 無事にーーって感じでもないっすね。 |
いづみ | うーん、ちょっと色々あってね。 |
咲也 | 真澄くん、大丈夫? |
真澄 | ……。 |
綴 | 行く前よりひどくなってんな。 |
至 | あれ、監督さん、ほっぺたちょっと赤くなってない? |
いづみ | ……。 |
真澄 | ……。 |
綴 | いい加減何があったのか話せ。 |
真澄 | ……。 |
いづみ | (私がいない方が話しやすいかな) |
いづみ | 私は席を外すね。 |
シトロン | マスミ、電気出すネ。 |
綴 | 出すのは元気な。 |
至 | 真澄、溜めこむと、余計に悪化するよ。 |
真澄 | ……死にたい。 |
咲也 | ええ!? |
綴 | おいおいおい、どうしたんだよ。 |
真澄 | もう、生きていけない……失恋した。 |
咲也 | 失恋!? 誰に!? |
綴 | まさか監督? |
真澄 | そう……。 |
綴 | 告白でもしたのか? |
真澄 | してない。 |
至 | じゃあ、監督に恋人でもできたとか? |
真澄 | そんな奴いたら殺す。 |
綴 | 落ち着け! |
シトロン | わかた! 実はカントク結婚してたネ! |
真澄 | だったら死ぬ……。 |
綴 | わー、待て待て! |
咲也 | じゃあ、何があったの? |
真澄 | ……。 |
真澄 | 一つ目は昨日……。 |
咲也 | それは、失恋したわけじゃないんじゃないかな。 |
綴 | 勘違いだな。 |
シトロン | はやちどりネ。 |
咲也 | はやちどり? |
至 | 多分早とちり。 |
シトロン | オー、それダヨ。 |
綴 |
俺も覚えがあるなー。 片思いしてると、色々悪い方に考えちゃうんだよ。 |
咲也 | へえ、そういうものなんですねー。 |
シトロン | ワタシ、片思いしたことないネ。 |
綴 | マジで!? じゃあ、初恋がまだってこと? |
シトロン | いつも向こうから寄ってくるネ。 |
綴 | シトロンさんってモテるのか……。 |
至 | 綴が片思いっていうのが意外。 |
綴 | いつも見てるだけで終わりっす。 |
至 | まあ、片思いの時が一番楽しいかも。 |
綴 | 大人の発言ですね! |
至 | 付き合うとゲームしづらくなるし。 |
綴 | オタクの発言っすね……。 |
咲也 |
でも真澄くん、このままカントクと ずっと離さないつもりじゃないよね? |
真澄 | ……なんて言えばいいかわからない。 |
咲也 | 謝ればいいんだよ。叩いて、ごめんなさいって。 |
真澄 | 絶対嫌われた。 |
咲也 | 謝ったら許してくれるよ。オレが一緒に行ってあげる! |
真澄 | ……。 |
綴 | なんか、咲也が兄貴みたいだな。 |
咲也 | え!? オレが、お兄さん? |
至 | たしかに。 |
シトロン | マスミ、弟ネ。 |
MANKAI寮 談話室
咲也 | そっか。弟かー。オレ、兄弟いないから、うれしいな! |
真澄 | 一人で行く。 |
咲也 | あ、待ってよ! 心配だから一緒に行くって! |
綴 | すっかりいいコンビだよな。 |
至 | ロミジュリ効果かもね。 |
いづみの部屋
いづみ | (真澄くんのことは、みんなに任せるしかないのかな……) |
いづみ | はい? |
真澄 | 俺。 |
いづみ | 真澄くん……話してくれる気になった? |
真澄 | ……。 |
咲也 | ほら、真澄くん! |
真澄 | さっきは、ごめん。 |
いづみ | え? |
真澄 |
叩いたことと、無視したこと……。 |
いづみ |
ああ、そんなの気にしてないよ。 叩いたのだって、私のために怒ってくれたんでしょ。 |
真澄 | 怒ってない? |
いづみ |
うん。それより、真澄くんこそ、私の言ったことを気にしてたんじゃ ないの? 私のために芝居するんじゃダメだってこと。 |
真澄 | ……気にしてるっていうか、わかんなくなった。 |
いづみ | わからなくなった? |
真澄 | どうすればいいのか。なんのために芝居すればいいのか。 |
いづみ |
私は真澄くんに演劇を好きになってほしかったし、 演劇を続ける私以外の理由を見つけてほしかったの。 |
いづみ |
真澄くんに作った特別メニュー、あったでしょ? 好きな芝居を見つけるっていうのもそのため。 |
いづみ |
あれから芝居も良くなっていったから、 好きなものが見つかったのかと思ってたんだけど……。 |
真澄 | 好きな芝居なら、もともとある。 |
いづみ | え? そうなの? |
真澄 | アンタの芝居。 |
いづみ | 私の……? |
真澄 |
ビロードウェイでストリートACTしてた、アンタの芝居が 好きだから、俺も同じようにがんばった。 |
いづみ | 私の芝居が……? あんなに下手で大根なのに。 |
真澄 | 関係ない。 |
いづみ | ーー。 |
いづみ |
(なんだ……私は役者として何も残せなかったと思ってたけど、 そうじゃなかったんだ) |
いづみ |
(真澄くんという才能を見つけることができた。 真澄くんが芝居を始めるきっかけになることができた) |
いづみ | (……下手でも大根でも、それだけで十分だ) |
いづみ |
(もう、役者としての自分に何も思い残すことなんてない。 監督として、胸を張ってやっていける) |
いづみ |
……ありがとう、真澄くん。 |
真澄 | 何が? |
いづみ | なんでもないよ。ちゃんと好きな芝居があったならいいんだ。 |
真澄 | ……好き。 |
いづみ | うん、私の芝居を好きになってくれてーー。 |
真澄 | ーー。 |
いづみ | 顔が近いよ!? |
真澄 | 好き……。 |
いづみ | ーー!! |
咲也 |
わー! 真澄くん、ダメだよ! ストップ! そういうのは相手の合意を得てからじゃないと! |
真澄 | 咲也、ジャマ。 |
咲也 |
だって、無理矢理やったら犯罪ーーって、あれ? 今オレのこと、名前で呼んだ? |
いづみ | あ、そういえば……。 |
咲也 | 初めて名前で呼ばれた……! |
真澄 | うるさい。 |
咲也 | うれしいよ、真澄くん! |
真澄 | うざい。 |
いづみ | (びっくりした……さっき、キスされるのかと思った) |
いづみ |
(でも、よかった。真澄くん、最初の頃に比べると、 みんなとも打ち解けて、どんどんいい方向に変わってる) |
いづみ |
(真澄くんが、もっともっと純粋にお芝居を楽しんで、 舞台の上に立てるようになりますように……) |