メインストーリー
第1幕 The Show Must Go On
第18話 至の本音
登場人物
監督(いづみ)
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MANKAI寮 バルコニー
いづみ | (『話があるから、後でバルコニーに来て』か……) |
いづみ |
(至さん、こんなメッセージ送ってくるなんて、 どうしたんだろう。何か相談でもあるのかな) |
至 | あ、もう来てたんだ。 |
いづみ | はい。話って何ですか? |
至 | 監督さんには最初に話した方がいいと思ってさ。 |
至 | 色々考えてみたんだけど、俺、劇団やめるね。 |
いづみ | え!? |
至 |
もともと、俺、浮いた家賃と食費をネトゲに注ぎ込もうと思って、 この劇団に入ったんだ。 |
至 |
演劇にも興味ないけど、稽古に出て、 脇役でもやるくらいならなんとかなるかと思ってさ。 |
いづみ | そんな理由だったんですか……。 |
至 |
それなのに、結構セリフは多いし、 みんな一生懸命やってて俺だけ場違いな気がしたんだよね。 |
至 | 今のうちにやめた方が、他の人を探す時間もあるからいいと思う。 |
いづみ | ……。 |
至 | そういうわけだから、みんなには明日話そうかとーー。 |
いづみ | ーー待ってください!! |
いづみ |
演劇には今でも全然興味ないんですか? みんなと舞台に立つことなんて、どうでもいいんですか? |
至 | ……。 |
いづみ |
(至さん、目を逸らしてる。 きっとやる気がないわけじゃないはず) |
いづみ | 朝練に出たりしてくれたじゃないですか。 |
至 | それはゲームのためで……。 |
いづみ |
ゲームやるだけなら、朝練に出なくてもできます。 私が作った特別メニューの基礎練もやってくれましたよね。 |
至 | ……。 |
至 |
本当は、俺もちょっとみんなに当てられて、 その気になりかけてた。 |
至 |
このまま公園までゲーム時間減らして がんばるのもいいかなと思ってさ。 |
いづみ | だったらーー! |
至 | でも、ダメだと思う。 |
いづみ | なんでですか!? |
至 |
俺は咲也や綴みたいに、みんなと打ち解けて 一緒にがんばっていくことなんてできない。 |
至 |
人と深くかかわることが苦手なんだ。 共同生活だって、あんまり好きじゃない。 |
至 |
だから、咲也たちみたいに全身全霊で舞台に打ち込むことなんて、 きっと無理だ。 |
いづみ | それが、本当の理由ですか? |
至 |
このまま続けてみて、やっぱりダメだったら、 みんなにも迷惑がかかるだろう? |
いづみ |
じゃあ、みんなや公園のことが どうでもいいわけじゃないんですね。 |
至 | そりゃあね。短い期間だけど一緒にやってきたわけだし。 |
いづみ | だったら、もう少し待ってみてください。 |
至 | それでダメだったら? |
いづみ | そのとき、考えましょう。 |
至 | 後々困ることになると思うけど。 |
いづみ | 私が責任を持ってなんとかします。 |
いづみ |
(今まで演劇に関わってきて、やめていく人もたくさん見た。 でも、至さんはその人たちとは違う。まだ迷ってる) |
いづみ | (きっと、続けたいっていう気持ちが残ってるはずだ) |
至 | ……わかったよ。じゃあ、保留にする。 |
いづみ | みんなにも、この話をしてもいいですか? |
至 | ああ。もともと話すつもりだったしね。 |
稽古場
咲也 | えええ!? |
シトロン | オー、バッドニュースネ。 |
綴 | まじっすか……。 |
真澄 | ふーん。 |
咲也 | やめるって、本気なんですか!? |
至 | 一応保留ってことにはなってるけど。 |
綴 | ティボルトは至さんの当て書きで書いたんすよ? |
至 | それは、ごめん。 |
シトロン | イタルも悩んだネ。気持ちわかるヨ。 |
真澄 | ……やめたければやめれば。 |
綴 | おい、真澄! |
咲也 | 真澄くん、至さんがやめてもいいの!? |
真澄 |
やる気がないならやめればいい。あのおっさんも言ってた。 |
綴 | 雄三さんか……。 |
至 |
そうそう。潮時だと思う。 もし、やめても、みんなのことは応援してるからさ。 |
咲也 | まだやめるって決まったわけじゃないですよね!? |
至 | まあ、そうだけど。 |
綴 |
ゲームよりも、舞台の方が面白いってわかったら、 本気になってくれるんすか? |
至 | わからない。ゲームよりも面白いものなんてなかったし。 |
シトロン | たしかにゲームは最高のエンターテインメントネ。 |
咲也 | 舞台だってそうです! |
至 | ……だから、こういう咲也との温度差もあるからさ。 |
咲也 | ……。 |
いづみ |
舞台にかける情熱は人それぞれです。 比べてもしょうがありません。 |
いづみ |
それよりも、至さんがみんなと舞台をやっていきたいかどうか、 大事なのはそれだけです。 |
至 | ……。 |
いづみ | そうですか? |
至 | ……考えさせてくれ。 |
いづみ | はい。もう一度、ゆっくり考えてみてください。 |
至 | ……。 |