メインストーリー
プロローグ
第6話 最後のチャンス
登場人物
監督(いづみ)
伊助(支配人)
ビロードウェイ(夕)
綴 | ……ふう。なかなか条件に合うところってないんだな。 |
いづみ | !! |
いづみ |
(あの子、昼間、劇団を探してた子だ! しかも確か、団員量のこと聞いてた!) |
いづみ | ねえ! 団員寮を備えてる劇団に興味ない!? |
???(綴) | え? |
???(綴) | あれ、昼間の……。 |
いづみ |
あの時、劇団探してるって言ってたよね? もう見つかった? |
???(綴) | いえ、まだ……団員寮がある劇団があるんですか? |
支配人 |
MANKAIカンパニー、 MANKAIカンパニーをよろしくお願いしまーす! |
支配人 |
団員寮完備、毎日二食付きの MANKAIカンパニーでございます! |
???(綴) | 毎日二食付き……? |
いづみ | そう! どうかな? |
真澄 | 誰、こいつ。 |
いづみ |
新入団員候補。 |
真澄 | 俺がいるのに? |
いづみ | まだ足りないの。 |
真澄 | アンタ、誰でもいいんだ……尻軽。 |
いづみ | 人聞きの悪いこと言わない! |
真澄 | 俺がいればいいだろ? |
いづみ | ちょっと黙ってて、真澄くん。 |
いづみ |
この子のことは気にしなくていいから、 入団を考えてみてくれないかな? |
???(綴) | 俺、全然経験ないけどいいの? |
咲也 | オレも未経験で入りました。一緒に頑張りましょう! |
支配人 | 僕も演劇始めて八年ですけど、今でも未経験同然です! |
いづみ | (それはどうかと思うけど……) |
???(綴) |
あと、俺、役者っていうより、 劇作家志望で脚本書いてみたいんだけど……。 |
支配人 | 今ちょうど欠員があるので問題ないです! |
いづみ | (まず間違いなく今の脚本より悪くなることはないだろうし……) |
いづみ |
それじゃあ、劇作家兼役者ってことで、どうかな? |
???(綴) | わかりました。よろしくお願いします! |
支配人 | やったー! |
???(綴) | 俺、皆木綴っていいます。 |
いづみ | よろしくね、綴くん! |
咲也 | これから、よろしくお願いします! |
真澄 | 俺だって、脚本くらい……。 |
いづみ | 張り合わなくていいから! |
いづみ | もう日が暮れちゃう。急いで劇場に戻らないと! |
綴 | え? 走るんですか? |
いづみ | 事情は走りながら説明するから! 今はとにかく走って! |
綴 | なんかワケありっぽいな……。 |
真澄 | わかった。アンタについてく。 |
咲也 | 急ぎましょう! |
支配人 | ぜえ、ぜえ、ぜえ……。 |
いづみ | 支配人、走り始めたばかりでばてすぎです! |
MANKAI劇場 客席
古市 | ほう、逃げはしなかったか。 |
咲也 |
はあ、はあ……何とか間に合いました、よね!? |
支配人 | ぜえぜえ、新……ぜえぜえ、入団……ぜえぜえ。 |
綴 | 無理しない方がいいっすよ、支配人。 |
いづみ | はあ、はあ、新入団員、連れてきました! |
真澄 | ……来た。 |
古市 |
首の皮一枚つながったか……運のいい奴らだ。 |
支配人 | じゃ、じゃあ、取り壊しはこれで……!? |
いづみ | よかった……。 |
古市 |
何を安心している。俺は団員を集められたら、 今日のところは引き上げると言っただけだ。 |
古市 |
昼間説明した通り、新入団員が二人増えたところで、 この劇団が存続できるはずがない。 |
支配人 | えええ! |
いづみ | そんな……。 |
真澄 | もう解散? |
綴 | ワケありのワケがシビアすぎる。 |
支配人 |
せっかく新生春組が発足できそうなのに…… やっぱり無駄だったんだ……上げて落とすとか鬼畜ぅ……。 |
古市 | 新生春組? |
支配人 | そうです! 集まれば新生春組の公演がーー! |
古市 | その新生春組とやらの旗揚げ公演はいつやるんだ。 |
支配人 | え? えーと、いつぐらいですかね、監督? |
いづみ | え!? 私? |
いづみ |
……うーん、もし皆で旗揚げ公演をやるとしたら、 じっくり基礎から稽古を積んで半年後くらいには……。 |
古市 | そんなに待てるか。 |
いづみ |
でも、皆経験も浅くて集まったばかりです。 そのくらいの時間は必要です。 |
古市 | 来月だ。 |
いづみ | は? |
古市 | 死ぬ気で猛稽古して、来月中には公演を行え。 |
いづみ |
来月って、一か月しかないってこと!? 無理ですよ! |
支配人 |
鬼! 悪魔! じわじわいたぶろうなんて、ドSキャラデ人気取りですか!? |
古市 |
わけのわからん言いがかりをつけるな。 特別に最後のチャンスをやろうと言ってるんだ。 |
古市 |
今から言う三つの条件を満たせたら、 借金の完済はしばらく待ってやらんこともない。 |
いづみ | 条件……? |
いづみ |
(この時は、知らなかったーーこの先待ち受ける危機と困難。 数多くの出会いと感動) |
いづみ | (……そして私が見届ける、たくさんの役者たちの開花を) |
いづみ | (この時の私はまだ、想像すらしていなかったのだ) |