メインストーリー
第1幕 The Show Must Go On
第7話 前途多難
登場人物
監督(いづみ)
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稽古場(夜)
いづみ |
えー、今日は至さんとシトロンくんが稽古に参加します。 綴くんは脚本執筆のためにお休みです。 |
シトロン | ヨロシクダヨ。 |
至 | 演劇経験ないから、迷惑をかけるかもしれないけど、よろしくね。 |
至 |
必要なものだけ自分の車で運んできたから、 あとは来週引っ越し業者に運んでもらうだけ。 |
咲也 | 車持ってるんですね! かっこいいなあ! |
至 | 何か必要な時は言ってもらえれば、車出すから。 |
いづみ | (大人だ……!) |
いづみ | それじゃあ、何かのときはよろしくお願いします。 |
至 | もちろん。 |
いづみ |
(頼もしいなあ。支配人はもとより、 団員にもこういう大人の人っていなかったから、新鮮かも) |
いづみ | では、今日もいつも通り準備運動と発声練習から始めますね。 |
いづみ |
次は、簡単なパントマイムをやってもらいます。 セリフはなし、動作だけで、相手にシチュエーションを伝えてね。 |
いづみ |
私が出題者にお題を伝えるから、他の人はどんな状況か 当ててみて。まずは気楽にゲーム感覚でやってみてね。 |
いづみ | それじゃあ、最初は咲也くん。 |
咲也 | はい! |
いづみ | 咲也くんは出かける前に動作で表現してみて。 |
咲也 | わかりました! |
いづみ | スタート! |
咲也 | ……。 |
シトロン | わかったヨ! 盆踊りダネ。 |
いづみ | ブー。 |
至 | ロボット? |
いづみ | ブー。 |
いづみ | (たしかに、ぎこちない動きはロボットに見えなくもない……) |
真澄 | 骨折して動けない。 |
いづみ | ブブー。 |
咲也 | ……。 |
シトロン | なんだろネー。 |
至 | うーん……。 |
いづみ |
はい、時間切れ。正解は、 出かける前というシチュエーションでした。 |
咲也 | 歯磨きしたり、髪をとかしてみたんですけど……。 |
シトロン | わからないネー。 |
至 | ちょっと難しかったかな。 |
咲也 | うう……。 |
いづみ | (咲也くんは不器用なのかな) |
いづみ | はい、次は真澄くん。 |
真澄 | 何すればいい? |
いづみ | 人と待ち合わせしてるところをやってみて。 |
真澄 | わかった。 |
真澄 | ……。 |
咲也 | 何か探してるところ? |
いづみ | あ、惜しい。 |
シトロン | 何か待ってるネ。 |
いづみ | それも惜しい。 |
至 | わかった。人を待ってるところだ。 |
いづみ | 正解! |
真澄 | 今のでいい? |
いづみ | うんうん。 |
いづみ | (真澄くんはパントマイムもうまいな。本当にそつがない) |
いづみ | 次は、至さんお願いします。 |
至 | お手柔らかに。 |
いづみ |
(至さんとシトロンくんは初心者としては及第点かな。 経験を積めば、もっとこなれてきそう) |
いづみ | それじゃあ、次のお題はーー。 |
至 | 稽古ってたしか、九時までだったよね。 |
いづみ | あ、すみません、もう九時だったんですね。 |
咲也 | オレ、まだまだやれます! |
シトロン | ワタシ、延長、サービスするネ。 |
いづみ | 怪しい商売みたいに言わない。 |
真澄 | 俺もアンタと一緒なら朝まででもいい。 |
いづみ | いかがわしい! |
至 |
うーん、でも明日も学校とかあるし あんまり無理しない方がいいんじゃないかな。俺も仕事だし。 |
いづみ | そ、そうですよね。今日はここまでにしましょう。 |
咲也 | あの、オレもう少し発声練習していってもいいですか? |
いづみ | 三十分だけならね。 |
シトロン |
ワタシも付き合うヨ。 |
真澄 | 俺もアンタがいるなら残る。 |
至 | じゃあ、俺はこれで。お疲れさま。 |
いづみ |
(至さんは結構あっさりしてるな。元々演劇が やりたいわけじゃないからかもしれないけど……) |
咲也 | アメンボ赤いなあいうえお! |
シトロン |
アメーアカーウオー! |
咲也 | アメンボ、赤いな、あいうえお、ですよ。シトロンさん。 |
シトロン | アカーアカーマンボー! |
咲也 | 違いますって。 |
シトロン | ジャパニーズむずかしいネー。 |
いづみ |
(シトロンくんの課題はいわずもがな、日本語だな。やる気はある みたいだから、公演までもう少し上達するといいんだけど) |
シトロン | アメーヨコーイエー!フゥー! |
いづみ | (……果てしなく、不安だな) |