メインストーリー
プロローグ
第4話 ストリートACT
登場人物
監督(いづみ)
伊助(支配人)
ビロードウェイ
支配人 |
いやー、神様幸夫様幸夫さんの娘様! まさに天の助けです。これで、劇団は救われました! |
支配人 |
さっきのあの人の顔見ました? こめかみぴくぴくしてましたよ。ぷぷぷっ。 |
いづみ | (さ、さっきと態度が全然違う……) |
いづみ |
安心しきってるところ悪いんですけど、 これから新入団員を見つけないと! |
支配人 |
え!? でも、幸夫さんのツテと虎の巻があるって……。 |
いづみ | あれは、あの場を乗り切るためのはったりです。 |
支配人 | ええ!? |
新人劇団員 (咲也) |
ウソだったんですか!? |
いづみ | (そんなまっすぐな目で言われると、ちょっと胸が痛む……) |
いすみ |
う、ウソというかお芝居です。 ストリートACTみたいなものというか……。 |
支配人 | そんな……それじゃあ、新しい団員は……。 |
いづみ | いません。 |
支配人 | えええええ……。 |
新人劇団員 (咲也) |
劇団はやっぱりつぶされちゃうんですか……? |
いづみ | そうならないために、今から死ぬ気で劇団員を探すしかない。 |
支配人 | 今からなんて無理ですよ〜! |
いづみ | 無理かどうかは、やってみなくちゃわからないじゃないですか! |
支配人 |
無理です。昔の団員は皆いなくなって、 新しい団員も結局一人しか入らなかったし……。 |
支配人 |
僕は全然人望ないし、劇団の評判も最悪だし…… こんな今の劇団に入ってくれる人なんて……うじうじ。 |
いづみ | (……ちょっとイライラしてきた) |
新人劇団員 (咲也) |
あの、オレ、何ができるかわからないけど、手伝わせてください! |
新人劇団員 (咲也) |
せっかく入った劇団をなくしたくないですし、 何もしないよりはマシですよね! |
いづみ | (それに比べてこの子はいい子だ……!) |
いづみ |
ほら、この子もこう言ってーー えっと、キミ、名前は何ていうの? |
咲也 | 佐久間咲也です! 花が咲くの咲也です! |
いづみ | 咲也くんか。よろしくね! |
咲也 | よろしくお願いします! |
いづみ |
ほら、新人の咲也くんが頑張ろうとしてるんだから、 支配人もしっかりしてください。 |
支配人 |
うう……わかりました。 どうせだめだろうけど、やってみましょう。 |
いづみ |
(いちいちイラッとするな、この人) |
咲也 | それで、どうやって団員を探せばいいんでしょう? |
支配人 | ビラ配りでもします? |
いづみ | うーん、やみくもに声をかけても、効果は低そうだし……。 |
いづみ |
(手っ取り早く演劇に興味がある人を集める方法…… 一人一人声をかけるよりも、一気に人目を集めて……) |
いづみ | そうだ! ストリートACTをするのはどうですか? |
いづみ | 劇団の宣伝にもなるし、演劇に興味がある人が集まるはず。 |
咲也 | なるほど! いいですね! |
咲也 |
オレ、ストリートACTってやったことないんですけど、 即興劇……エチュードってやつですよね。 |
咲也 | 内容はいきあたりばったりなんですか? |
いづみ |
ある程度はテーマを決めた方がいいと思う。 今回は劇団の良さを伝えるようなストリートACTをしよう! |
咲也 | 劇団の良さ……。 |
いづみ | 支配人、何かこの劇団に入るメリットはありませんか? |
支配人 |
そうですね……団員良があって、 僕が腕によりをかけて作った食事が朝晩二食付きます! |
いづみ |
新人劇団員は収入が少ないから、 生活費が浮くのはかなりのメリットですね。 |
咲也 | えっと、確かに、そこはメリットなんですけど……。 |
いづみ | (? なんだか歯切れが悪いな) |
支配人 | それに、専用劇場があるので、練習場所には困りません! |
いづみ |
ふむふむ、それじゃあ、その辺りを盛り込んだ内容で ストリートACTをしましょう。 |
いづみ |
まず登場人物は私たち三人、支配人は支配人役で、私は監督役。 咲也くんはオーディションを受けに来た劇団員志望の男の子。 |
いづみ | 設定は、オーディションの最中ってことにしましょう。 |
咲也 | わかりました! |
支配人 | さすが、幸夫さんの娘さんですね。慣れてらっしゃる。 |
いづみ |
私も以前、劇団にいたので、 ストリートACTもやったことがあるんです。 |
支配人 | そうだったんですか。経験のある方は違いますね〜。 |
咲也 | 頼もしいです! |
いづみ |
(段取りを組むのはできるんだけど、 その先は……まあ、やってみるしかないよね) |
天鵞絨駅
支配人 |
やあ! 僕は劇団MANKAIカンパニーの支配人だよ。 これから路上オーディションを始めるんだ。 |
いづみ | (自己紹介から入っちゃった……) |
いづみ |
(そういえば、公園の冒頭もそうだったな。 あれはこの人の脚本だったんだ……) |
支配人 | では、さっそく最初の方、お名前と自己紹介をどうぞ! |
咲也 | は、はい! 一番! 佐久間咲也! 17歳! |
咲也 |
趣味は、好きな戯曲の台詞を河原で練習することで、 特技は人の名前と顔を覚えることです! |
支配人 | 志望動機は何ですかー? |
咲也 |
元々お芝居に興味があったんですが、たまたまこの劇団で住み込み 劇団員を募集しているのを見かけて、思い切って応募しました! |
支配人 |
へ〜、そうだったんだ〜! |
いづみ |
(本気で感心してる……。 もしかして、面接もやらなかったのかな) |
支配人 | では、監督から、入団試験の課題をお願いします! |
いづみ |
え!? あ、ああ、ええと、そうねーではー これから入団試験の課題を発表します、いえ、するわ! |
いづみ | (ダメだ。声が上ずるし、台詞も棒読み……) |
通行人A | ひどいね。 |
通行人B | 何これ、罰ゲームとか? |
通行人A | こういう設定なんじゃない? |
いづみ | ……。 |
いづみ | (やっぱり、私なんかじゃだめだよね……) |
咲也 | 監督? どうしたんですか? |
いづみ |
ごめん。私劇団にいたけど、どんなに練習しても 大根すぎて役者としては使い物にならなかったの。 |
咲也 | 大根なんて、そんなことないですよ! |
支配人 | 大根ぶりなら僕も自信があります。 |
いづみ | 二人とも……。 |
いづみ | 今は弱音なんて言ってられないね。やれるだけやってみよう! |
咲也 | はい! |
支配人 | どうせだめなんですから、だめでもともとですよ! |
いづみ | (支配人は前向きなんだか後ろ向きなんだかわからないけど……) |
いづみ | 頑張りましょう! |
観客の青年(真澄) | ……。 |